jazz and freedom and records

ジャズ レコードを聴きながら勝手気ままな戯言日記、暇つぶしにどうぞ・・・・・

FIRST and LAST ・・・・・THE REMARKABLE CARMELL JONES,RETURNS / CARMELL JONES

 

通説によると、カンサス州とミズーリ州の双子都市、カンサスシティの地方グループで活躍中、偶々、当地を訪れたかのヨアヒム・ベーレントに見出され、DB誌で”wonderful trumpet player”と紹介された無名の新人、カーメル・ジョーンズの初リーダー作。的を射たタイトルとカヴァが実に良いではありませんか。

60年にW・コーストに進出した期待の新星カーメルの最初のアイドルは、M・ディビスでしたが、C・ブラウンを聴いてからはブラウンにすっかり心酔したという。本作でもブラウン譲りの美しいトーンで気負いのない端正なフレージングは並の新人の域を遥かに超えている。お馴染み‘Come Rain Or Come Shine’を、難しいテンポで4分29秒、ワンホーンでじっくりと歌い上げています。しかも八分の力で余裕のプレイです。他のナンバーでもけれん味の無いアドリブを展開しタイトルに恥じない出来に仕上がっている。

ランドは、やや調子を落としていますが、ゲーリー・ピーコックの思索的なbがその分を補っている。

モダン・トランペッターの中でC・ブラウンの影響を受けたミュージシャンは数多いが、このカーメル・ジョーンズはその直系・正統派と言っていいでしょう。P・Jazzレーベルに数点の作品を残した後、E・コーストに移り、64年、H・シルバー・クインテットのヒット・アルバム"SONG FOR MY FATHER」に参加している。
しかし、当時のモリモリのE・コースト・シーンでは、彼の端正ともいえるtpがあまり生かされず、プレステージに"JAY HAWK TALK"(65年)を録音した後、新天地を求め、ヨーロッパへ渡って行く。

線の細さが故に結局、大成はしなかったが、僕のフェイバリット・トランペッターの一人として普段、数少ない彼のレコードを良く聴いている。もし、もう2、3年早く、LAではなく、NYでデビューしていたら、彼の人生も大きく変わっていたかもしれないけれど・・・いゃ~、難しい所ですね。

 

そのジョーンズが本国に戻って久しぶりに吹き込んだその名も”RETURNS”(Revelation 44,1982年10月)。フロリダでのコンサートとスタジオのライブ演奏が納められ、一部は、何と、SONYの‘Professional Walkman’というポータブル・カセット・レコーダーで収録しているため、音質は芳しくない。
ところが、そのハンディを上回るカーメル・ジョーンズの素晴らしいtpが聴かれます。カルテットとasを加えたクインテットに分かれているが、カルテットで演じる‘Stella By Starlight’、‘What’s New’では、しっとりと円熟したプレイで、、また、バップ・ナンバー‘Now The Time’、‘Billy's Bounce’では、卓越したテクニックとホットなtpで聴衆を沸かせます。
そしてラスト・ナンバーのロリンズの‘Pent Up House’では、まるでブラウンを彷彿させる鮮やかなソロで締め括り、実力の程を遺憾なく発揮している。こんな名手でも、あまり恵まれないとは、きびしいジャズ環境が窺われます。

あまり知られることのないこのレコード(レギュラーのラスト作)は、僕のささやかな「お宝物」の一枚です。

1996年11月7日、生まれ故郷カンサスシティで死去、享年60。いいトランぺッターです。