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愛称「セント・ジェームス病院」。
ここには、かって、「ザ・リズム・セクション」と謳われた時代のガーランドの姿はない。マッカーサーの「老兵は死なず、ただ立ち去るのみ」ではないが、この年(1962年)、JAZZLANDに2枚、そして本作を最後に71年、MPSに再起の吹込みをするまで、長い冬眠生活(レコード上)に入る。
アルバム・タイトルでは誰も呼ばないほど”ST. James Infirmary”に一曲集中盤である。なぜだろう? ディープなガーランド・ファンでなくても、この演奏だけは、お気に入りのようです。親しみ易いメロディをこれ以上遅くても、早くても、ダメ、という絶妙のテンポで淡々と弾き語るガーランドの前に理屈は退散するしかなさそうだ。この頃になると、スロー・バラードを情緒纏綿と綴るスタイルで勝負するタイプに転換し始めたが、時代が悪すぎた。このカヴァも見ようによっては、「人生の黄昏」を感じないわけでもない。
大昔、本盤の2ndプレス?(紺・ライトロゴ)で持っていたが、このレコードを欲しがっていた知り合いと、ある賭けをし、負けて手放すハメになった。そこでやむなく国内盤を手にしたが、「音」がまるで違う。聴きものの"ST. James Infirmary”で、一番、美味しいポイントでもあるパーシップのブラシがサッと入ってくる所が全く生きていない。本盤はオリジナルか2ndでないと本当の良さが解らないと思う。その後、オリジナル盤をずっと探しているが、サッパリ縁がない。まぁ、伊達や粋狂で「賭け」などするものではない、との戒めと受け止めている。
話が横道に逸れてしまったが、最終曲、12分にも及ぶ”Nobody Knows The Trouble I
See”はひょっとして、タイトルも含め当時のガーランドの心境そのもので、「冬眠」への隠れメッセージだったのではないだろうか。
なお、曲目記載の項でA-4の”I Ain't Got Nobody”がプリント・ミスで抜けている。ただ、ラベルには記載されている。