jazz and freedom and records

ジャズ レコードを聴きながら勝手気ままな戯言日記、暇つぶしにどうぞ・・・・・

乾坤一擲 ・・・・・ THE JODY GRIND / HORACE SILVER

BLUE NOTE  BST 84250

全く個人的な見解だが、本作は、シルヴァーが「マイルス、コルトレーンがどうした、フリー・ジャズ? それが一体どうした。オレのジャズはこれだ!」と、当時(1966年録音)のジャズ・シーンに叩きつけた挑戦状ではないか、と勝手に思っている。


5年間に及ぶミッチェル、クックを擁したクィンテットを解体し、前々作"SONG FOR MY FATHER"、前作"THE CAPE VERDEAN BLUES"とフロント陣を徐々に刷新してきたホレスが新世代の二人で固めた一枚。まだ、不安があったのか、或いは新しいサウンドに厚みを持たせる意図か、"THE CAPE VERDEAN BLUES"で J.J.ジョンソン(tb)を加えたようにJ・スポールディング(as)を3曲にゲストとして参加させている。

 

 

当時まだ無名に近い新人二人(ショー、ワシントン)とドルフィ・ライクのスポールデイングから成るフロント陣の熱気は歴代のそれに勝るとも劣らない高いポテンシャルを有し、シルバーの相変わらず、エキゾチックで魅力的なメロディと核融合し、エナジーは高い。中でも”Grease Piece”でのモーダルでスピード感溢れる演奏は、「オレだってその気になれば、やれまっせ」と言わんばかりの新主流派演奏で圧巻です。

全篇を通じてシルヴァーの創造力(Jazzを難しくさせない)が高いレベルで維持されている。カヴァは時代を反映して甘口で、ジャズ・ロック調のタイトル曲を含め親しみやすいメロディ曲が続くけれど、中身は至って正統です。

それからもう一つ注目すべき所は、シルヴァーの並々ならぬ意欲を感じとったのか、ライオンはブルーノートとしては珍しくゲートフォールドのカヴァを用意し、自分の写真を初めて?メンバーと一緒に載せ(左下)、シルヴァーの意欲に応えている点です。それとも何かの暗示なのか?

本作は、シルヴァーが放った乾坤一擲の勝負手だったが、時代はそんな思惑を遥かに超すスピードで通り過ぎ、同じメンバーで2作目を録音することはなかった。

 

 

あれから60年、今でもこの演奏から聴こえてくるものは、シルバーの些かも色褪せていない不屈のジャズ・スピリットだ。

巷では無視状態(笑)ですが、自分にとって㊙愛聴盤の一枚。