この手のレコードの宿命なんだろうか、安レコ・コーナーで。
帰り道、Daysに寄った。
何処かに紛れ込んだようで見当たらず、この救出盤に針を。
「幻の名盤読本」に載っている”PROTO-BOPPER”(REVELATION・72年)から受ける「病んだ」、「危ない」ピアニストというイメージ(自分だけかも)とかけ離れたpが流れ出し、情景を思い浮かべながら一音一音、実に細やかに描写していく”Autmun In New York”に虚を衝かれた。淡彩画風だが奥行きがしっかり付いている。
A面のバラード演奏3曲が終わりマスターと二人で「いいね!」と周波数はピッタリ。
いつの間にかマスターの手元に初リーダー作のRIVERSIDE盤(1957年、見たことがない別カヴァ)やREVELATION盤、STEEPLECHASE盤などオーバニーのリーダー作が数枚、用意されていた。
そこで自分が未聴のSTEEPLECHASEのヨーロッパでのライヴ盤(73年)、ペデルセンとのデュオ盤(74年)との聴き比べを始めた。
この二枚、本アルバム(1982年)とは別人のように強いタッチでpを弾いている。パーカーも認める実力があるにもかかわらず悪習、悪癖による長いブランク、不遇時代を経て71年に復帰し、レコーディングの機会も増えた喜びの表れなのでしょう。
それから10年、すっかり穏やかでmatureに。
B面の”They Say It's Wonderful”の軽いスイング感、”Too Late Now”の沈み込むような情感も聴きもの。この”PORTRAIT OF AN ARTIST ”はオーバニー流バラード集ですね。
カヴァ通りの内容で本来ならば「安レコ・コーナー」に投げ入れられる類のレコードではありません。
浅学で間違っているかもしれませんが、本作がリーダー・ラスト作。
1988年没、享年64。
マイナーな J・オーバニーのレコードを聴き比べ、マスターと語り合えるジャズ喫茶、そうは無いでしょう。