jazz and freedom and records

ジャズ レコードを聴きながら勝手気ままな戯言日記、暇つぶしにどうぞ・・・・・

天国では恩讐を超えて ・・・・・ HOMECOMING / DEXTER GORDON

マキノ高原 メタセコイア並木)

今回の一枚は、”HOMECOMING / DEXTER GORDON”を

70年代半ば、さすがのフュージョンにも陰りが見え始め、ハード・バップ回帰の動きが活発になり、アメリカ建国200年に当たる1976年は、TVドラマ「ルーツ」も話題となって、空前のリバイバル・ブームに沸いていた。そんな折、三顧の礼をもってCBSコロンビアに迎えられ、ヨーロッパから帰米したゴードンは最高の条件で契約したそうです。その第一弾が本作。CBSコロンビアの新社長になったばかりのB・ランドヴァルはこの第一作を必ず成功させるために、当時、NYで、かなり評判となっていたSHAW-HAYES QUINTETをベースにしたVillage Vanguardでのライヴ、という最善にして最高の策を練った。
そして、プロデューサーにショーをずっとフォローしてきたM・カスクーナを抜擢している。そうした用意周到な準備が整った本作、燃えないワケはありませんよね。まさに「ホームカミング」です。

TOPに配された‘GINGERBREAD BOY’でのゴードンのブローを聴けば一聴了然です。けれども、このライブ録音が成功した理由はゴードンの気合はともかく、やはり、SHAWとそのグループの安定したバッキングに支えられていることは言うまでもありません。ショーのオリジナルが2曲、マシューズが1曲入っていることからも本作の性格を窺わせます。
レコードでは一面それぞれ2曲ずつ、計8曲バランスよく配置されていますが、ゴードンの‘FENJA’とショーの‘IN CASE YOU HAVEN'T HEARD’が収録されたSIDE2が一番好きです。奥さんに捧げた曲”FENJA”はミドル・ファストのテンポに乗ってゴードン節が冴え渡ります。後を引き継いだショーが、真に素晴らしく鮮やかなソロを取ります。ショー、屈指の名ソロの一つでしょう。それから‘IN CASE YOU HAVEN'T HEARD’ではソロに入って、一転して豪放磊落でありながらモダンなゴードンのパフォーマンスが白眉です。その後のショーとヘイズのコンビネーションの良さも言うまでもありません。
SIDE4に収録された‘ROUND MIDNIGHT’もなかなかGooですね。ゴードンの持ち味が十分引き出されいますが、ここでもショーのスムーズなflhがこの名曲を更に魅力あるものに仕上げている。

本作で大成功した後、スタジオ録音された第二弾”SOPHISTICATED GIANT”は10万枚近く売れたそうですが、個人的には?です。S・ハンプトンの編曲とゴードン特有のレイド・バックが嚙み合わず、資金力に余裕があるメジャー・レーベルが金を積んだ(大編成+ゲスト)からと言って、良い作品が生まれるとは限らない。DB誌の国際批評家投票でts部門NO.1のステッカーが虚しい。

1989年5月10日、44歳の若さでショーが、また、翌1990年4月25日、ゴードンもこの世を去った。享年67歳。

後年、ゴードンとショーは抜き差しならぬ間柄になったが、天国では恩讐を越え、Village Vanguardのでのような熱い演奏を繰り広げたでしょう。